リモンチェッロとマスカルポーネクリームでケーキ風に作る、ナポリの伝統菓子ババのレシピ!
ナポリの伝統菓子、ババ!
以前、復活祭にナポリで食べられるパスティエーラのレシピを紹介しましたが、このババもナポリでかなり有名な伝統菓子です。ナポリのお菓子やさんに行ってこのふたつのお菓子が見当たらないことはまずないだろうというくらい、定番中の定番。
とは言ってもナポリ以外ではほとんど見かけないパスティエーラと違って、ババの方は色々な場所で様々なアレンジをされて見かけることが多く、フランスではサヴァランと呼ばれて形は違っても同じ作り方で作られています。
ババとは?ババの歴史
ババはブリオッシュのようなバターがたっぷり入った発酵生地を焼き上げてラム酒などのリキュールを使ったシロップを染み込ませたケーキのことです。
現在のようなシロップを含ませるババを作ったのは、18世紀初頭ポーランドを追われフランス・ロレーヌ地方の領主になったポーランド王スタニスワフ・レシチニスキによるものだと言われています。
このスタニスワフ、実はマドレーヌの歴史にも登場しています。彼がコメルシー宮殿に住んでいた当時、召使いだったマドレーヌ・ポルミエがお菓子の生地をホタテの貝殻に入れて焼いたことからマドレーヌが誕生したという話です。あまり名前を聞いたことがない王ですが、マドレーヌにババに、有名なお菓子誕生に関わっているのでかなり食通の王だったのかなと想像します。
歯があまりなかったスタニスワフは、アルザス地方のお菓子・クグロフをそのまま食べることができずにハンガリーの貴腐ワイン・トカイ(とかラム酒とかマデイラ酒とか、文献でいろいろ出てきますが)で柔らかくして食べはじめたのがババの起源だそうです。
ババの名前の由来
ババという名前の由来は、『千夜一夜物語』を気に入ったスタニスワフがアリババにちなんでこれを「ババ」と名付けたという説があります。
またポーランドをはじめとする東欧諸国やロシアでは、ババという名前の伝統的な焼き菓子は数多くありそこから名前がつけられたという説もあります。
ババ、フランスに広まる
その後ルイ15世に嫁いだスタニスワフの娘マリーによって、フランスの宮廷にもババが広まります。
そして1835年、ロレーヌ地方出身の菓子職人ストレーがパリにお店を開き、今のマッシュルームのような形にラム酒のシロップを含ませる今のババの形に改良されました。
サヴァランの誕生
その後、食通で有名なブリア・サヴァランがフルーツのマチェドニア(フルーツサラダのこと)に合わせるリキュールを発明すると、それにババを合わせることをストレーで修行していた職人オーギュスト・ジュリアンが思いつきます。そしてドーナツ型に焼き上げてから表面にアプリコットジャムを塗り、フルーツを飾ったサヴァランが誕生します。
ナポリにババはいつ伝わった?
フランスではパリの宮廷からパティスリーへ、現在のババが誕生してサヴァランへと進化していったのですが、それではナポリへはいつ伝わったのでしょうか?
それはかの有名なマリーアントワネットの姉、マリア・カロリーナがナポリのフェルディナンド4世に嫁いだ時に伝えられたと言われています。ちなみに彼女はその他にもベシャメル、シュー、グラタンなどもイタリアに持ち込んだと言われています。
ちょっと複雑ですが、
・ババを作ったスタニスワフの娘のマリーがルイ15世に嫁ぎフランス王宮にババを広め、
・そのルイ15世の孫・ルイ16世の妻がマリーアントワネットで、
・そしてマリーアントワネットの姉マリア・カロリーナがフェルディナンド4世に嫁いだ時ナポリにババを伝えた
わけです。この頃のヨーロッパは政略結婚が多く王室同士かなり血縁の繋がりがあったんですね。
1836年、ちょうどストレーがパリのお店でババを作った翌年にイタリアで料理人ヴィンチェンツォ・アニョレッティによって書かれたイタリア料理マニュアルに、ナポリの銘菓としてババが既に登場しています。
なのでフランスでもイタリアでもほとんど同時期にババが知れ渡っていった、ということですね。
ババとサヴァランの違い
クグロフ → ババ → サヴァラン
と発展していったわけですが、現在はババとサヴァランの生地は同じでマッシュルーム型のものをババ、ドーナツ型のものがサヴァランとかたちの違いで呼び分けられています。
ナポリではどんな形のものでもババと呼ばれ、小さく作る時はマッシュルーム型、大きく作る時はドーナツ型、というような感じで作り分けています。
フランスでは大きく作られたババはあまり見たことがありませんが、ドーナツ型で作るサヴァランの時はフルーツやクリームが合わせられていることが多いです。
ババの作り方
ということで長々とババ誕生の歴史をご紹介しましたが、実はマッシュルーム型もドーナツ型も自宅にありません(!)かたちによって呼び方が違う!と書いたばかりでなんなのですが
それでも以前からよく作っていて好きなお菓子なのでなんとかならないかな〜と思っていたところ、ケーキのように作るババのレシピをピンタレストで発見(スペイン語のサイトです)。
私も何冊かスペインのパティスリーの本を持っていますが、本当に最近のスペインのお菓子は洗練されていて素敵✨フランスやイタリアのようにこのお菓子にはこのかたち、というような固定観念があまりなく伝統を軽々と超えてくれる斬新さがあります。
もちろんお菓子の歴史を知ったりするのは大好きなのですが、時々スペインやアメリカ菓子のとんでもないかたちや作り方に出会うとあんまりこうしなきゃだめ、と考えなくてもいいんだな!とハッとしましす。
ということで早速、ケーキ風にババを作ってみました。
作り方はブリオッシュなどの発酵生地と同様、強力粉にイースト、わずかな量の砂糖にひとつまみの塩を加えて混ぜ合わせ、たっぷりの卵にバターを合わせてパンを作る要領でよく捏ね合わせます。
生地の伸びがよくなりツヤが出て、ボールから離れるようになれば捏ね上がりです。
ババ用の型をお持ちの方は準備した型に入れます。2倍くらいに膨らむので型の半分くらいまでの高さまで生地を入れます。
今回私は四角いセルクル型を使いました。天板にオーブンシートを敷いてババの生地を置いて軽く伸ばし、セルクル型を当ててくり抜きます。残った生地はアルミカップなどに入れて利用して下さい。
そのまま35度くらいに温めたオーブンなどで1時間程度、発酵させます。
そして2倍程度に膨らんでいることを確認したら、180度のオーブンで15〜20分程度焼きます。
焼きあがったババ生地はシロップをたっぷり含ませるために乾燥させます。翌日くらいにトッピングするとちょうど良いかも。
シロップは今回はラム酒ではなくリモンチェッロを使いました。リモンチェッロは以前のレシピ「白いトルタカプレーゼ」でも使用している、アマルフィ産のレモンのリキュール。レモンのリキュールと聞くと酸っぱいイメージがあるかもしれませんが、レモンの皮をアルコールに漬けこんで砂糖を加えて作るリキュールなので酸味はありません。
このリキュール自体が甘いので、加える砂糖を控えながらシロップを作ります。シロップが高温だと生地に染み込みやすく、冷めると染み込みにくくなります。あまりに高温だと生地が傷むので、40度くらいに調節しておきます。
そしてシロップを含ませる前に、よく焼けているマッシュルームの頭の部分をもったいないですが切り落として表面を平らにしてからシロップを塗っていきます(上にクリームをデコレーションしない場合はそのままシロップを塗ってOKです)。
そして上からサントノレの口金でマスカルポーネクリームを絞り出して、出来上がりです。
使用する材料
使用する道具
型については、今回私が使用したスクエア型の底のないセルクル型が見つからないかったので底のあるケーキ型で良いと思います。
ババ生地は型離れが良くしっかりしているので、バターを塗って粉をはたいておけば底が抜ける型である必要はないです。
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ナポリの伝統菓子 リモンチェッロのババ
- Total Time: 2 hours 15 minutes
- Yield: 1 台(15cmのスクエア型) 1x
Description
リモンチェッロとマスカルポーネクリームでケーキ風に作る、ナポリの伝統菓子ババのレシピ!
Ingredients
ババ生地
- 225 g 強力粉
- 70 g 無塩バター, (室温)
- 30 g グラニュー糖
- 3 個 卵
- 4 g ドライイースト, (生イーストなら12g)
- 2 g 塩
リモンチェッロ・シロップ
- 200 ml 水
- 80 g グラニュー糖
- 50 g リモンチェッロ
マスカルポーネクリーム
- 200 g 生クリーム
- 100 g マスカルポーネ
- 45 g グラニュー糖
飾り
- 適量 レモン
Instructions
準備
- 型にバターを塗って粉をはたいておきます。
ババ生地
- ボールに強力粉、グラニュー糖、塩、ドライイーストを入れて軽く混ぜ合わせます。
- 溶いた卵を少しづつ1.に加えながら、よく混ぜます。
- 粉気がなくなったら、バターを少しづつ加えながらよく混ぜます。伸びがよくツヤが出て、ボールの側面から離れるようになるまで混ぜ続けます。
- 生地をオーブンシートを敷いた天板の上に出し、生地を平らに伸ばします。(1cmの厚さくらい)
- 生地に型を当ててくり抜きます。残った生地はアルミカップなどに入れて使います。
- 35度くらいの保温にしたオーブンまたは暖かい場所で1時間程度、2倍の大きさになるまで発酵させます。
- 180度のオーブンで15〜20分程度焼きます。
- 出来上がったババはシロップをたっぷり含ませるためにしっかり乾燥させます。
リモンチェッロ・シロップ
- 水とグラニュー糖を鍋に入れて温めてグラニュー糖を溶かし、火を止めてリモンチェッロを加えます。
- シロップが40度になるまで冷やします。
マスカルポーネクリーム
- ボールに生クリームとマスカルポーネを入れて、絞り出せる固さ(7〜8分立て)になるまでホイッパーで泡立てます。
- クリームの一部をババに直接塗る用に取り置き、残りをサントノレの口金を入れたしぼり袋にクリームを詰めます。
組み立て
- ババ生地の上の部分を切り落とし平らにします。
- シリコンマットを敷いた天板の上にババをのせ、上からリモンチェッロ・シロップをたっぷりとかけ十分生地にシロップを含ませます。
- 上面にマスカルポーネクリームを薄く塗り、その上にクリームを絞り出してデコレーションします。
- 上からすりおろしたレモンの皮を振りかけます。
- Prep Time: 1 hours
- 発酵: 1 hours
- Cook Time: 15 minutes
- Category: ケーキ
- Cuisine: イタリア
Nutrition
- Serving Size: 1 grams
- Unsaturated Fat: 0
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