イタリア、ナポリのイースターに欠かせない、リコッタを使った伝統菓子・パスティエーラのレシピ
パスティエーラとは?
パスティエーラ、イタリアに住んだことがなければなかなか知ることのないお菓子のひとつだと思います。
イタリア・ナポリでイースターに作られるタルト菓子で、ナポリではイースターだけでなくクリスマスなどの行事などにも作られ、お菓子屋さんでは一年中売っています。
タルト生地にリコッタベースのクリームが詰められているのですが、特徴的なのは小麦の粒が入っていること。柔らかく煮てあるので食べているとあまりわからないのですが、口の中にわずかな食感が残ります。
パスティエーラの伝説
お菓子に小麦を使うのがどうしてかずっと疑問だったので、パスティエーラの由来を調べてみました。
一番有名なのはギリシャ神話に登場する海の妖精セイレーン、パルテノぺがパスティエーラを作ったというもの。パルテノぺがナポリ湾にたどり着きそこを住居としたことでナポリが生まれたため、それに感謝するためにナポリの住民たちにとってもっとも貴重な7つの食材をお供えにしたというのです。
それは小麦粉、リコッタチーズ、卵、柔らかい小麦、オレンジフラワーウォーター、香辛料と砂糖で、パルテノぺがそれらを全て混ぜ合わせてパスティエーラを作った、という伝説です。
小麦をクリームに入れるのは実は食糧難の時代にかさを増すためだったのかな?と思ったりしたのですが正反対のものすごい縁起をかついだお菓子だったんですね。
材料の小麦粉は豊かさ、卵は新たな生命、リコッタチーズは豊かさ、オレンジフラワーウォーターはカンパニア地方の香り、砂糖はパルテノぺの甘い歌声を表しているといわれています。
(香辛料については言及なしで調べても出てきませんでした。ちなみに今回のレシピには入れていませんが、香辛料としてシナモンを入れるレシピも数多くあります)
まさにイースターを代表するお菓子。ひとつひとつの食材や料理に意味を込める、日本のおせちみたいな感じですね。
パスティエーラの作り方
基本的にはリコッタクリームがベースになったタルトで、今回のレシピではカスタードクリームも加えてあります。
あとは中に入れる小麦。ナポリ付近ではパスティエーラ用にすでに茹でてある小麦が瓶詰め(または缶詰め)にされて売られているので楽に作ることができるのですが、ナポリ以外でなかなかこれを手に入れることは難しい。
私は今回下茹でしてある小麦を買って長めに茹で(ナポリの瓶詰めの茹でてある小麦はかなり柔らかいので)、さらに牛乳で煮詰めています。
日本で小麦の粒を料理に使ったこともなかったので調べてみたのですが、日本ではなかなか手に入らないみたいです。サラダなどの料理に使われるのは大麦かスペルト小麦などで、私が調べた限り普通に食用に売られている小麦はほとんどありませんでした。
イタリアでもスペルト小麦で代用することはあるようなので、スペルト小麦を代わりに入れるのが一番近い方法かも知れません。
ちなみにイタリア語で小麦はGrano(グラーノ)、スペルト小麦はFarro(ファッロ)、大麦はOrzo(オルツォ)です。
煮た小麦の他にリコッタクリームの中に入れるのはフルーツの砂糖漬け。なんでも良いのですが、色が薄いフルーツの方がリコッタクリームの色が綺麗に仕上がるように思います。今回使ったのはレモンピール。
リコッタチーズは手に入らない場合、簡単に手作りすることができます。材料4つ!自家製リコッタチーズの作り方のレシピを参考にしてみてください。
パスティエーラを自由に作ろう!
パスティエーラを作る行程は長く準備は大変です。
タルト生地を作り、小麦を煮て、カスタードクリームを作り、リコッタクリームを作り・・・
このパスティエーラを作る前にナポリのお義母さんに作り方を教えてもらったのですが、タルト生地を下に敷く時はめん棒を使わず一片づつちぎって手で延ばしながら敷く、カスタードクリームは牛乳に直接卵黄と砂糖を加えてのんびりと加熱していく、など自由さ満載。
それでもいつも美味しいパスティエーラが出来上がるので、あまり「こうしなきゃ!」と考えなくてもいいか、と家庭菓子に触れるたびに肩の力が抜けるのを感じます。
行程は多いですが、パスティエーラはナポリの家庭で作られるお菓子でもあるので自由に、肩肘張らずに作ってみて下さい。
使用する材料
使用する道具
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イースターの定番!ナポリのお菓子・パスティエーラ
- Total Time: 3 hours
- Yield: 1 台(20cm マンケ型) 1x
Description
イタリア、ナポリのイースターに欠かせない、リコッタを使った伝統菓子・パスティエーラのレシピ
Ingredients
パートシュクレ
- 250 g 薄力粉
- 100 g 粉砂糖
- 120 g 無塩バター
- 1 個 卵
小麦の牛乳煮
- 200 g 茹でた小麦(粒), (乾燥した小麦で60g程度)
- 100 ml 牛乳
- 大さじ½ 無塩バター
- ½ 個 レモンの皮
- ひとつまみ 塩
カスタードクリーム
- 250 g 牛乳
- 2 個 卵黄
- 50 g グラニュー糖
- 25 g コーンスターチ
- ½ 個 レモンの皮
リコッタクリーム
- 250 g リコッタチーズ
- 180 g グラニュー糖
- 1 個 卵
- 小さじ½ オレンジフラワーウォーター
- 50 g レモンピール, (角切り)
Instructions
パートシュクレ
- ボールに室温に戻した柔らかいバターを入れて、空気を含ませないようにゴムベラなどで練ります。
- 粉砂糖を入れてさらに柔らかく練ります。
- 溶いた卵を少しづつ加えて混ぜます。
- 薄力粉を加えて生地をこねないようにまとめます。まとまってきたら台の上に取り出し、なめらかになるまでこねます。
- 平たく形を整えてラップで包み、冷蔵庫で1時間ほど休ませます。
小麦の牛乳煮
- まず小麦を茹でます。
- (下茹でしてある乾燥小麦の場合)
- たっぷりのお湯を沸かして、小麦を加えて柔らかくなるまで約30分程茹でます。舌ですりつぶせるくらいの固さになるまでが目安。
- 煮て柔らかくなった小麦を小鍋に入れ、牛乳、バター、塩、レモンの皮を加えて牛乳の汁気がなくなるまで煮詰めます。
- 出来上がったらレモンの皮を取り除き冷ましておきます。
カスタードクリーム
- 鍋に牛乳とレモンの皮を入れて温めます。
- ボールに卵黄とグラニュー糖を入れてホイッパーでよく混ぜ合わせます。
- コーンスターチを入れて混ぜ合わせ、沸騰した牛乳をボールに半量加えて溶きのばし鍋に戻します。
- ホイッパーで底が焦げないように中火で混ぜ続けます。クリーム状になり一度少し固くなりますが、混ぜ続けるとツヤが出てなめらかになるのでそこまでしっかり混ぜます。
- 一度裏ごししてレモンの皮を取り除き、バットに移してラップを密着させて冷蔵庫で冷やします。
リコッタクリーム
- リコッタチーズとグラニュー糖を合わせてホイッパーでよく混ぜます。
- 卵を加えて混ぜ合わせ、オレンジフラワーウォーターを加えます。
- 角切りにしたレモンピールを加えて混ぜます。
組み立て
- 冷めたカスタードクリームをハンドブレンダーやホイッパーなどでなめらかに戻し、リコッタクリームと小麦の牛乳煮を合わせて混ぜ合わせます。
- パートシュクレの生地の一部(¼程度)を上に飾る用に取り置き、残った生地を伸ばして型に敷き込みます。
- 生地を側面にしっかり密着させ、型からはみ出した生地を切り落とします。
- 1.のクリームを型に注ぎ入れます。クリームは焼くと若干ですが膨らむので、ぎりぎりまで注がずに型の縁より少しだけ低く注ぎます。
- 上に飾るパートシュクレを薄く伸ばし、細長く切り取って格子状にのせていきます。
- 160度のオーブンで1時間15分+15分下火のみで焼きます。
- タルト型など背が低い型で焼く場合はもう少し短い焼き時間で大丈夫です。
- タルトの空焼きをしないので、オーブンの下段で焼く、下火を強くする、最後に下火のみで焼くなどしっかり中まで火が入るように調節をしてみて下さい。
Notes
- 小麦は下茹でがしてあるものを使用しています。サラダなどに使う場合は10分ほどで茹で上がるものです。パスティエーラに使うには柔らかい方が良いので、表示時間より長い時間茹でています。
- 普通の乾燥小麦の場合は前もって小麦を数日間水につけてから茹でる必要があるので、表示に従って下さい。
- リコッタチーズは手に入らない場合、簡単に手作りすることができます。材料4つ!自家製リコッタチーズの作り方のレシピを参考にしてみてください。
- Prep Time: 1 hours
- Inactive Time: 0 hours
- Cook Time: 2 hours
- Category: タルト&パイ
- Cuisine: イタリア
Nutrition
- Serving Size: 1 grams
- Unsaturated Fat: 0
outra_praia
初めまして。レシピブログから来ました。
ポルトガルのパステル・デ・ナタについて調べている時に、
フランスのフラン、スペインのイースターのタルト、Flaoを知ったのですが、
イタリアのナポリには、こんなイースターのお菓子があるんですね。初めて知りました。
Flaoもリコッタチーズ系のチーズを使うので、似てる点が面白いし、参考になります。
茹でた小麦を使うのも面白いです。いつか、食べてみたいなぁ…。
下記のブログで、PastelとEmpanadaについて調べたブログを書いてます(超長いですが~)。
その中で、パステル・デ・ナタとFlao等について、少し触れてます。
イタリアの料理は大好きだし、南欧の料理に興味津々なので、レシピブログでフォローさせて頂きました。
更新、楽しみにしてます。
Chicca Food
初めまして!
ブログ拝見しました!すごい研究されていて、勉強になりました。
スペインのイースターのタルトは知りませんでした。ナポリはフランスとスペインの統治下にあったのでスペインの影響も強いんですよね。
言語で言えば、ナポリ方言はフランス語っぽい単語が結構ありますし。例えばフランス語のGateau(ガトー)が元になったGatto'(ガット)という名前の料理があったりとか。
けれど南イタリアでいうとアラブの影響も強いので、料理の起源を調べているだけでも本当に面白いです。
イタリアは統一されたのが19世紀なので地方によって全く文化も違いますし、ナポリを離れると全く違う料理になるのでイタリア料理、イタリア菓子と言えど全然違いますし、調べ始めるとキリがないんですよね。
ブログ、ゆっくり拝見させていただきます!