おいしいお菓子を作るためにはまず適切な材料選びから。それぞれのお菓子に合った適切な材料があります。ここでは日本、イタリア、フランスの材料を中心にお菓子の基本の材料の使い方や選び方をご紹介します。
小麦粉
日本だとお菓子作りなどには薄力粉、うどんには中力粉、パンには強力粉などと使い分けていると思います。なんとなく使い分けている方もいると思いますが、タンパク質の含有量の違いによって分けられています。
タンパク質は小麦粉に水を加えて練ったときにできる粘りや弾力を作るグルテンのこと。なので弾力が必要なパンには強力粉、サクサクと口当たりよく仕上げたいお菓子には薄力粉が使われます。
薄力粉にはタンパク質が少ない軟質小麦が原料として使われ、粒の大きさも細かいです。一方で強力粉はタンパク質が多い硬質小麦を原料とし、粒が荒くなります。
フランスの場合、Type+数字という風に分けて小麦粉の種類を分ています。おおざっぱに言ってしまうと、
Type45 = 薄力粉
Type55 = 中力粉
Type65以上 = 強力粉
になります。
フランスでは日本のタンパク質の含有量で分ける方法ではなく灰分の違いで種類分けしています。灰分ってあまり聞き慣れないと思いますが、小麦を粉に精製するときに中心部の胚乳部分にいくほど灰分が少なくなるんですね。なのでより精製されている粉=灰分が少ない粉、となります。
アルプスの少女ハイジでハイジが白パンの柔らかさに感動する場面がありますよね。つまり精製の荒い灰分の多い黒パンばかり食べていたハイジが灰分が少ない、白い、より精製されているやわらかいきめの細かい粉のパンを食べて感動するというやつです。
なので厳密にいうと日本の粉とは同じ成分ではないのでイコールではないのですが、精製が荒く灰分が多く含まれるほどタンパク質の含有量も多くなるので、使用用途としては同じになることが多いのです。
イタリアはTipo 00、0、1、2という風に小麦粉の種類をわけています。こちらも思い切って分けると
Tipo00=薄力粉
Tipo0=中力粉〜強力粉
となります。ちなみにTipe0の方はManitoba(マニトバ)と呼ばれることもあります。Tipe1、2はほとんど見かけることがなく、精製の荒いものはFarina integrale(ファリーナ・インテグラーレ)と表記されていることがほとんど。
分け方はフランスと同じで精製度合い、つまり灰分の含有量で分られるのでこちらも日本の粉と完全にイコールではないです。Tipo00でピザ用としてタンパク質の含有量がtipo0より高いものが売られていたりするので余計わかりにくいこともありますが、より白く仕上げたいときはtipo00、素朴に仕上げたいときはtipe0でという感じで使っています。
砂糖
砂糖の役割やどんなお菓子にどんな種類の砂糖を使ったらよいのかはもっとくわしく
【保存版】お菓子作りと砂糖 – 砂糖の役割・種類と選び方
の記事にまとめてあります。
グラニュー糖
サトウキビから作られる、純度が高いサラサラの砂糖。クセがないすっきりとした甘さでどんなお菓子にも向きます。海外で砂糖といえばこれ。レシピに「砂糖」とあればとりあえずグラニュー糖を使えば間違いありません。
カソナード
フランス産の砂糖で、その多くはインド洋のレユニオン島で産出される、サトウキビから作られる精製されていない砂糖です。ラム酒やバニラの香りがあり、お菓子に使うと深みのある甘さが出ます。クレームブリュレに使われたり、アメリカのソフトクッキーに白砂糖と合わせて使われることで独特の風味を出すのに使われたりします。
粉砂糖
グラニュー糖を細かく粉砕したもの。生地に馴染みやすく、クッキーに使うとサクッとした食感になります。
マスコバド糖
フィリピンのネグロス島で生産されたサトウキビの汁を煮詰めて自然乾燥させた精製されていない黒砂糖。フェアトレードがだんだん認知されるようになった頃から有名シェフの間で人気の素材になり、今ではスーパーでも普通に手に入るようになりました。日本の黒糖に似た味わいですがそれよりもマイルドな風味で、優しい甘さがあります。
乳製品
バター
お菓子を作るときに欠かせないのがバター。風味がよくなるだけではなく、クッキーをサクサクにしたりケーキをふんわりさせたりします。
基本的にはお菓子には無塩バターを使い、塩分を加えたい場合は後から塩を加えることで調整します。
カルピス発酵バター(食塩不使用)
日本に住んでいたときは成城石井の発酵無塩バターかカルピスの発酵バターをお菓子に使っていました。発酵バターは、バターの原料となるクリームに乳酸菌を加えて発酵させることによりコクが加わり独特の風味が出ます。
エシレ 無塩発酵バター
優れた乳製品の産地として知られるフランス中西部・エシレ村で生産される香り高いバターです。
ボルディエ無塩発酵バター
フランス国内の三ツ星レストランで使用されているボルディエのバター。柚子や海藻入りのフレバーも人気。
フランス産発酵バター セル・ドゥ・メール(粗塩入りバター)
こちらは有塩バターですが、ゲランドの塩の粒がそのまま入っていて食べるとジャリっとした食感がありこれがまた美味しいんです・・✨
あまりお菓子用ではないですがそのままバゲットにつけて食べると止まりません。
生クリーム
フランスではいわゆるショートケーキのような「生クリームを泡立ててデコレーションして食べる」ケーキがあまりなく、あくまでチョコレートに混ぜてガナッシュにしたりしてクリームを作るときに使うものです。なので乳脂肪分が高いものが少なく、ホイップしにくい。
いちごなどにかけて食べるホイップクリームというのは缶で別に売られているのですが、味もいまいち。乳製品が美味しくて豊富なフランスなのに意外なんですよね。ホイップクリームに使うならタカナシとか中沢の方が使いやすいと思います・・。
マスカルポーネ
ティラミスに欠かせないイタリアのフレッシュチーズ、マスカルポーネ。クセがなくコクがあるので使いやすいチーズです。
リコッタチーズ
チーズを作るとき生乳に凝固剤を加えて固まってきたものを集めて「チーズ」にし、その時に出てくるあまった水分(乳清/ホエー)を再び加熱して作られるのがリコッタ。さっぱりした味わいで料理やお菓子に使いやすいチーズです。
家庭で簡単に手作りすることもできます。→自家製リコッタチーズの作り方
クリームチーズ
チーズケーキに欠かせないクリームチーズ。
私は料理にはフィラデルフィア、子どものおやつなどそのまま食べるときにはKiriという感じで使い分けています。フィラデルフィアの方が酸味が強く、Kiriなどフランス産のクリームチーズは酸味が穏やかです。
サワークリーム
生クリームを乳酸菌で発酵させてできるサワークリームは、ニューヨークチーズケーキには欠かせないクリーム。クリームチーズと合わせることで酸味のあるまろやかで食べ応えのあるチーズケーキになります。
フランスだと手に入りづらいので生クリームを成熟させて乳酸菌を加えたクレーム・フレッシュ・エペスで代用することが多いです。
チョコレート
クーベルチュールチョコレート
チョコレートはカカオ含有量やブランド、そしてチョコレートのティステングでは産地も合わせて選ぶことがあると思います。
カカオのパーセンテージで選ぶ場合は子供向けや子供向け・作る方の好みもありますが、焼き菓子であまり高いパーセンテージのものを選ぶと苦味だけが残り食べづらいこともあるので注意が必要です。焼き菓子ならカカオ分が60パーセントを超えないものを選んだほうがいいと思います。
チョコレートの味がストレートに出やすいレシピのときは手に入るものでできるだけよいメーカーのものを選んでみてください!
ヴァローナ(VALRHONA)
フランスの有名パティスリーでも使用されているフランスのメーカーです。
ヴァローナは原料のカカオ豆にこだわり、世界各地の契約農園でカカオ豆の栽培から収穫までを行っています。そのためどのチョコレートを選んでも産地や品種、カカオ分の特徴がはっきりしていて、チョコレートのティスティングにも向いています。
またヴァローナのクーベルチュールチョコレートは素早く溶けて伸びがよく、お菓子の材料としてもとても使いやすいのも特徴です。
これだけ高品質で種類も多く、扱いやすいチョコレートが世界中で簡単に手に入るヴァローナは一番おすすめのチョコレートメーカーです。
グアナラ(カカオ 70パーセント)
力強いカカオの風味と苦味、フルーティな酸味のバランスがよいチョコレートです。
最初酸味の強いチョコレートってどうなのかな?と思ったものの、ティスティングでたくさんのチョコレートを食べ続けると最後まで食べ飽きなかったのが酸味のあるチョコレートでした。
チョコレートを食べ慣れた、高品質なチョコレートを探している人におすすめです!
カライブ(カカオ 66パーセント)
ドライフルーツやパンの風味が強い、カリブ海産のトリニタリオ種を使用したチョコレートです。酸味が少なくてナッツなどとも合わせやすい、使いやすいチョコレートです。
マンジャリ(カカオ 64パーセント)
マダガスカル産のカカオを使用した希少価値の高いチョコレートです。
ベリー系の果実味があり、こちらもグアナラと似ていつまでも食べ飽きない味です。あまりいろいろなものと合わせず、チョコレートだけで楽しむお菓子にぜひ。
ラクテ(カカオ 33パーセント)
ミルクチョコレートですが、子ども用の甘ったるいものとは全く違う洗練された味。コクがあり濃厚なのに後味すっきり、甘味のバランスも本当にいい。ブラウンシュガーを使っているのでどこかキャラメルのような香ばしさも感じます。お菓子に使ってもこれだけで食べても美味しいチョコレートです。
イボワール(ホワイトチョコレート)
ホワイトチョコレートって甘ったるくてあまり好きではなかったのですが、イボワールを食べてからすっかり印象が変わりました。なめらかで上品、大人が食べても本当に美味しいホワイトチョコレートです。カカオ分の高いチョコレートも魅力ですが、ラクテ同様、ぜひこちらも試してもらいたいチョコレートです。
カレボー(Callebaut)
ベルギー生まれのチョコレートメーカー、カレボー。世界中のベルギーチョコレート専門店で多く使われている、プロ向けのチョコレートです。
お菓子用のクーベルチュールはどれもチョコレートチップ状になっているので使いやすいです。もちろんそのままチョコレートチップとしてクッキーに混ぜ込んで使うこともできます。
クーベルチュール エキストラダーク No. 70-30-38
カカオをしっかり感じられるカカオ分70.5パーセントのエキストラダーク。同時にフルーティさもありバランスがすごくよいチョコレートです。
クーベルチュール スイート No.811
カカオ分54.5パーセントの、ムースでも焼き菓子でも何にでも使いやすいチョコレート。
カカオバリー(Cacao Barry)
1842年から続くフランスの老舗メーカー、カカオバリー。
伝統的なプロ向けチョコレートシリーズのHéritage(エリタージュ)、西アフリカのカカオ農家と共に作り上げたPureté(ピュルテ)シリーズ、カカオ原産地を指定したシリーズOrigine(オリジン)の3つのラインナップがあります。
カカオのパーセンテージ・原産地など選択肢が豊富なラインナップでチョコレートへの強いこだわりが伝わってくる品質ながら値段もヴァローナと比べると手頃なのも魅力です。
Héritage(エリタージュ)ミ・アメール(カカオ58パーセント )
ミ・アメールとは半分苦い、という意味で焼き菓子にもムースなどにも使いやすいカカオ分58パーセントのクーベルチュールチョコレートです。
あまりチョコレートを消費しない方はとりあえずこれさえ置いておけば色々なお菓子に使えます。
Pureté(ピュルテ)エクセランス(カカオ55パーセント)
こちらもカカオ分55パーセントと使いやすい、バランスのとれたチョコレートです。
Origine(オリジン)タンザニア(カカオ75パーセント)
タンザニア産のカカオ分75パーセントのチョコレートです。苦味と酸味のバランスの良い逸品。
チョコレートチップ
クーベルチュールなどのチョコレートはそのまま食べると口の中ですっと溶けるように、とても溶けやすい性質を持っています。その為焼き菓子などに入れると熱ですぐに溶け出してしまいます。
製菓用のチョコチップは、熱を加えても簡単に溶けないように加工されています。そのためクッキーなどの焼き菓子に入れても形が保たれ、焦げ付きません。
ココアパウダー
牛乳を加えてショコラショーにして飲んだり、焼き菓子に加えてチョコレートの風味を出すのに使います。
バンホーテン ココアパウダー
どの家庭にも常備されているのでは?というほど定番のココアパウダー 。使いやすく味も本格的。
ヴァローナ ココアパウダー
強いカカオの風味と赤みがかった色が特徴の、ヴァローナ社のココアパウダー 。こだわったお菓子を作りたいときに。
ナッツ
アーモンドパウダー(皮なし)
使用用途がかなり多いので常備しておくとよいです。お菓子には主に皮なしのものを使うことが多く、生地がしっとりします。
アーモンドパウダー(皮付き)
皮付きのものは皮なしと比べて風味が良いのが特徴。小麦粉の全粒粉と一緒でザクザクとした食感になります。アーモンドの風味を強く出したいときに。
ヘーゼルナッツパウダー
日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、イタリアではアーモンドと並んでヘーゼルナッツもよく食べます。有名なヌテラもヘーゼルナッツペーストにチョコレートを混ぜたものです。
アーモンドパウダー同様、生地に混ぜると独特の香ばしい風味が出ます。
ピスタチオ
ジェラートにしたりケーキにしたりとイタリアでは大活躍のピスタチオ。
私はお菓子の仕上げの色のアクセントに使うことが多いです。お菓子の飾りには緑色が濃いものを選ぶと少量で美しい色が出ます。
香料
バニラ
バニラビーンズ
焼き菓子やクリームに少し入れるだけでスペシャル✨な味になるバニラ。バニラアイスクリームやカスタードクリームなど強くバニラの香りを出したいときはバニラビーンズ、焼き菓子などにはバニラエクストラクトを使っています。
バニラエクストラクト
日本ではバニラオイルやバニラエッセンスを使うことが多いかと思いますが、イタリアやフランスではバニラエクストラクトが一般的。
バニラエクストラクトとは人工香料などを使わずに、バニラビーンズを直接アルコールに漬けて香りを抽出します。バニラエッセンスに比べると濃縮度は低いので使用する量は多くなりますが、自然なバニラの香りがでます。
もちろん同じレシピでバニラエクストラクトではなくバニラエッセンスを使うこともできますが、その場合は量を調節して下さい。(バニラエクストラクトが小さじ 1だったらバニラエッセンスで1-2滴でいいです)
アーモンドエキストラクト
イタリアのお菓子作りに欠かせないアーモンド。
杏仁豆腐に使われる杏仁、あんずの核に似た味でお菓子がグッとイタリアっぽくなります。
リキュール
お菓子に使うとグッと深みが増すリキュール。糖分が多いお菓子に使うと甘ったるくなく、キレがよくなります。全て揃える必要はありませんが、チョコレートに合わせるラム酒、果実系のお菓子に合わせるキルシュやコアントローをまず揃えて、好みによって増やしていくのがいいと思います。
ラム酒
サトウキビを原料に作られたリキュールでホワイト、ゴールド、ダークの順に熟成が長くなり色が濃く、独特の風味が出てきます。
キルシュ
さくらんぼの果汁から作られるブランデーの一種で、無色透明、クセがないので果実を使ったタルトやシロップなどによく使われます。
コアントロー
オレンジを使ったフランスのリキュール。爽やかでまろやかな甘み、こちらも無色透明でどんなお菓子とも合わせやすい、常備しておきたいリキュールです。
グランマルニエ
こちらもオレンジを使ったフランスのリキュール。コアントローと同じアルコール度数であるものの、製法の違いからグランマルニエの方が甘みが少なく苦味が強いので存在感を出したいときに。色も琥珀色。
ポワールウィリアムス
洋梨を使ったリキュール。主にフランスのアルザス地方で作られ、香りが繊細でまろやかな口当たり。
アマレット
イタリア菓子に欠かせないリキュール・アマレット。アマレットを始め、アーモンドを使ったお菓子に使われます。
リモンチェッロ
レモンを使ったリキュール、リモンチェッロ。お菓子に使っても、食後にそのまま飲んでも。アマルフィの香り高いレモンを使った、南イタリアをたっぷり感じられるリキュールです。
塩
イタリア・フランスに住んでから、サラダもお肉も塩とオリーブオイルだけで食べることが多くなったのですがそれが本当に美味しいんです。ときどき買うポテトチップスも塩味だけなのに飽きない。日本で塩味のポテトチップスだと塩だけじゃなく調味料が添加されていますよね。
イタリア・トラーパニやフランス・ゲランドの天然の塩はミネラル豊富で風味が豊か、塩辛いだけじゃなく味わい深く飽きないんです。
ゲランドの塩
天日製塩法で作られるミネラル豊富で穏やかな味わいの塩。
フルール・ド・セル
塩の精華という意味で、天日製塩法にて作られる塩の表面にできる大きな結晶のみをかき集めた塩。
マルドンソルト
こちらはイギリスの塩ですが、仕上げに振りかけるなら他のフルールドセルよりもこちらがおすすめ。マルドンの塩はピラミッド型の塩の結晶で中が空洞になっているので焼きあがったお肉やサラダなんかにふりかけても塩の味が強く出過ぎることがなく、それでいてカリカリとした食感が出るので仕上げにふりかけるのにぴったり。
天日乾燥した塩をそのまま集めたフルールドセルと違いマルドンの塩の方は海水をさらに15〜16時間煮詰めて結晶化させています。
ゼラチン
板ゼラチンと粉ゼラチンは、形状が違うだけで同じものです。
家庭では量を計りやすい粉ゼラチンを使うことが多いかもしれませんが、厨房ではほとんどの場合板ゼラチンを使用します。板ゼラチンの方がより透明感が出るのでゼリーなどに使うと綺麗な仕上がりになる為です。レシピによって使い分けたりしても良いかもしれません。
板ゼラチン
暖かい水で溶かすとゼラチンが溶けてしまうので、必ず冷たい水でゼラチンをふやかします。夏場などは氷水を使います。ゼラチンの臭みを取りしっかり戻すためたっぷりの水を使い、ゼラチンがふやけたら水気をよく切って使用します。粉ゼラチンと違い、使う水は分量外です。
粉ゼラチン
粉ゼラチンの分量の4〜5倍の水を加えて10分ほどおいてふやかしてから使います。
板ゼラチンも粉ゼラチンもどちらも同量のグラム数で置き換えることができます。
膨張剤
パンやお菓子を膨らませるときに使う膨張剤。
基本的にはパンを膨らませるときにはイースト、パウンドケーキやマフィンなどのお菓子を膨らませるときにはふくらし粉を使います。
パンに使うイーストはパン酵母と呼ばれる微生物のちからでパンを膨らませます。なのでシンプルな小麦粉の味に深みや美味しさが出るパンができます。
一方でふくらし粉の場合、化学的に炭酸ガスを発生させて生地を膨らませているのでイーストのような香りやうまみは出ませんが、お菓子はその生地自体にバターや砂糖が含まれていて味がついているのでわざわざ発酵が必要なイーストを使う必要はほとんどの場合ないわけです。
ドライイーストやベーキングパウダーがずらっと並んでいると何の料理に何の膨張剤を使ったらいいのかわからなくなってしまうと思います。ここではそんな膨張剤の選び方と特徴をご紹介します。
生イースト
イーストとはパンを膨らませるための微生物のこと。パン酵母と呼ばれ、特にパンを作るときに使われます。
その中でも生イーストは酵母を培養して、水洗いして水切りしたもの。粘土のような黄土色で、ひとかたまりにして売られています。生イーストは特に糖分を分解する力が強いので、菓子パンなど糖分が多い生地に使うと発酵時間が短くすみます。焼き上がりもふっくらとしてイースト臭がしないのが特徴です。
低温にたいする耐性があるので、冷蔵・冷凍する生地に使うことができます。
注意点としては、生イーストは冷蔵品なので15日ほどしか持ちません。できるだけ早く使い切るようにします。
ドライイースト
パン酵母を低温で長時間乾燥させ、脱水し粒状にしたのがドライイーストです。
ドライイーストは酵母が仮眠状態にあるため、予備発酵と呼ばれる、使う前にぬるま湯に入れて発酵力を復活させる作業が必要です(中には必要のないものもあります)。ちょっと手間はかかりますが、長期保存ができ作りたいときにすぐ作れるので家庭にストックしておくと便利です。
生イーストと違い糖分に弱いのでハード系のパン作りにむいています。また焼成後もイーストの独特の風味が残りやすいです。
インスタントドライイースト
少しややこしいですが、予備発酵のいらない乾燥させたパン酵母をインスタントドライイーストと呼び、上記の予備発酵の必要なドライイーストと分けています。
ドライイーストより粒が細かいので溶けやすく、発酵力も強いのでどんな生地にも使えます。
低糖生地用(ハード系パンなど)と耐糖生地用(菓子パン)があるので作りたいパンによって使い分けます。
低糖生地用(糖分12パーセント以下の生地)
耐糖生地用(糖分12パーセント以上の生地)
ベーキングソーダ(重曹)
重曹は酸性の液体と混ざる、または加熱すると二酸化炭素が発生してお菓子が膨らみます。
最近は重曹を使ったエコな掃除方法なども流行っているので、使ったことがある方も多いのではないでしょうか?排水溝などを掃除する時、重曹をふりかけてお酢をふりかけるとシュワ〜っと泡立ちますよね。あの力で生地を膨らまそうとするわけです。
ただ重曹を使う場合、生地が黄色っぽくなったり独特の苦味が出たりします。なので生地に美味しそうな色をつけたい時は重曹を使うと良いのですが、苦味は抑えたい。そのために酸性の材料を混ぜることで、少しの量で苦味を抑えながら生地に美味しそうな色をつけ、生地の膨らみを助けることができます。
生地は横に膨らむ特徴があるので、どら焼きなど、しっかり焼き色がついて横に広がるタイプのお菓子にぴったりです。
ベーキングパウダー(ふくらし粉)
ベーキングパウダー の成分はほとんどベーキングソーダ(重曹)で、そこに酸性の液体を加える必要がないようにすでに酒石酸やクエン酸、リン酸カルシウムなどが添加されているものです。重曹にすでに酸が加えられているので、どんな生地にも使うことができます。
生地は焼き色がつかず縦に膨らむ特徴があるので、白っぽく仕上げたいシフォンケーキなどにはベーキングパウダーの方が向いています。
また、ベーキングパウダー にはよく「アルミニウムフリー」と書かれたものをみかけますが、これはベーキングパウダー に加えられた酸の種類のことです。以前は添加される酸の材料として硫酸カリウムアルミニウム(ミョウバン)がよく使用されていましたが、体に有害なアルミニウムが含まれるため最近ではアルミニウムを含まない酸が用いられるようになりました。
おいしい材料でおいしいお菓子を作ろう!
日本、イタリア、フランスの材料を中心にそれぞれの特徴と使い方をまとめてみました。使い方・選び方に迷ったら参考にしてみてください!
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