ナポリ近郊、ヴェスヴィオ山の麓で栽培される長期熟成可能な幻のトマト、ピエンノロトマトのお話です。
ピエンノロトマトとは?
ピエンノロトマトとはイタリアのナポリ近郊、ヴェスヴィオ山の麓で栽培されるトマトの品種のことで、Pomodorino del Piennolo del Vesuvio(ポモドリーノ・デル・ピエンノロ・デル・ヴェスヴィオ)としてDOP(原産地保護呼称)に指定されています。
なんのこっちゃ?という感じですがポモドリーノとは小さいトマト、ピエンノロとはナポリ方言で振り子の意味なのでヴェスヴィオ産の吊り下げられたミニトマトといった意味です。
というのもこのトマトは収穫されると細い縄でトマトの枝を結びあわせて大きな房を作り、軒先などに吊るして保存するからです。これがなんと春先までもつのです。
1年先でも食べられるトマト!
なぜトマトがそんなにもつのか?
そのわけはヴェスヴィオの土壌にあります。
ヴェスヴィオ山の斜面で作られるので日当たり・水はけがいいので甘みが凝縮された水分の少ないトマトが出来上がるのです。実際、雨が多い年はトマトに水分がたまりすぎてしまうのであまり長持ちせず、ピエンノロの房にせずそのまま消費すると言っていました。
ピエンノロトマトのかたちは先がピンと尖っていて皮が厚く、ヘタの部分もしっかりとトマトにくっついています。だからもつんですよね。
収穫してすぐに食べてもいいのですが、やはりピエンノロにして数ヶ月たって水分が抜けて皮にシワが入っている、より熟成された頃のものが一番おいしいです。
ピエンノロトマトパスタ、食べ方のコツ
実は夫の実家がこのヴェスヴィオ山の麓にあり、家の裏の畑でこのピエンノロのトマトを栽培していました。彼らにとって普通のトマト=ピエンノロのトマトなのでこのトマトのことを特にピエンノロと呼んでもいません。
なのでうちで作ったトマトでパスタにしたよ〜と何も知らずピエンノロトマトで作ったパスタを初めて食べたとき、なんで普通のトマトパスタがこんなにおいしいのか??とずいぶん衝撃を受けました。とてもコクがあり、甘みがあり少しの酸味があり、少し煮詰めるだけで濃厚なクリームのようなソースになるんです。
早速このトマトをもらってローマの家で調理したところ、途中でポンッという破裂音と共にトマトが弾けて天井まで赤く染まりました(当時の家がロフトでキッチンの天井がかなり低かったというのもありますが・・)。
普通ミニトマトを調理に使う場合は丸のまま使っても加熱していれば皮が柔らかくなり途中で木べらで潰したりすればそれでよいのですが、ピエンノロの場合は皮が厚いので調理前に水を貯めたボウルの中で手でひとつづつ潰してから調理することを後から教わりました・・・まあそれだけ皮が厚いので長持ちするんでしょうね???? 掃除が大変でした・・・
あとはトマト自体の味が濃いので塩はほんの少し、ニンニクは入れずオリーブオイルとバジルだけでシンプルに食べるのが基本です。
幻のトマト、ピエンノロ
昔は貧しい農民の保存食だったそうで、ピエンノロが家にあると恥ずかしいと隠していたそうです。
今では改良を加えられていない貴重な品種として、しかもヴェスヴィオ山の斜面での栽培・収穫は機械が使用できないため手間がかかることから生産量も多くなく、スローフード協会の消滅の危機に瀕する食材を守るプロジェクト「プレシディオ」の食材にも選ばれています。
今回はスーツケースに入れてピエンノロをふたつ、むりやりフランスまで持って帰ってきました
着いてみたらかなりトマトが落ちてしまっていて、キッチンの棚にかけてみたけれどやはり風が通らないせいなのかもうところどころいたみ始めました・・ナポリを思い出しながら早めに消費しようと思います。
イタリアどころかナポリ市内でもあまり見かけないピエンノロトマト、ナポリ旅行の際にはぜひ食べてもらいたい!
ナポリ在住のPiazza Italiaさんによると、最近では日本や海外向けに黄色のピエンノロもあるそうで、缶詰や瓶詰めが日本にも輸入されているそうです。イタリアンレストランや食材店で見かけたらぜひ試してみてください!
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